博士
博士

ベビースターラーメン

助手
助手


助手 博士、博士、ちょっとお伺いしたいことが...

博士 うむ、なんじゃね?

助手 実はこれなんですが...

ベビースターラーメンの画像

博士 おお、これはベビースターラーメンではないか。

助手 はい、トウキョウフードストアで特売していたので買って来ました。いつもは1ドル19セントなんですが、今日は99セントとお安くなっています。

博士 ふうむ、ワシが子供の頃は、食べ過ぎると腎臓が悪くなるなどと言われておってな、親がなかなか買ってくれなかったもんじゃった。

助手 ところが博士、いまやベビースターラーメンは健康食の仲間入りを果たしたようです。さすがはジャパニーズジャンクフードの貴公子と呼ばれているだけのことはありますね。ほら、見てください。

「カルシウム102mg入り」の画像

博士 なになに、1袋あたりカルシウム102mg入り、じゃと。

助手 ええ、ニッポンの公衆衛生審議会の定めによりますと、30歳で中等度労作に従事する男性が健康に生きていくために必要なカルシウムは1日600mgということになっていますから、その6分の1がベビースターラーメン1袋で賄える計算になります。

博士 それはすごい。では、朝昼晩とベビースターラーメンを2袋づつ食べれば、他には何も食べなくてもよい計算になる。

助手 あ、いえ、博士、そういうものではなくて...

博士 そうか、考えてみれば朝食と夕食が同じ量というのはヘンじゃな。では朝は軽く1袋、昼は2袋、晩はたっぷりと3袋でどうじゃ。

助手 博士、他の栄養素も必要なんですから。

博士 おお、そうか、そうじゃったな。これはワシとしたことがウカツじゃった。

助手 でですね、カルシウムの話に戻りますが、ちょっと妙なんです。

博士 何がじゃね。

助手 さっきお見せした通り、1袋あたり102mgのカルシウムが入っているとパッケージには印刷してあります。しかし、一方ではそれを否定する表示もあるのです。

博士 ううむ、それは何かね。

助手 はい、これをご覧ください。

成分一覧表の画像

博士 これはアメリカで表示が義務づけられている成分表じゃな。

助手 はい、その通りです。ベビースターラーメンのパッケージはニッポン国内のものと同じものですが、そのままでは連邦食品衛生局の規制を満たしませんので、裏にこのような成分表が貼り付けられています。

博士 この成分表がどうかしたのかね。

助手 ここです。上の写真の下の方、ちょっと見にくいんですが、”Calcium 0%” とあります。

博士 このパーセントというのはどういう意味かね?

助手 はい、成分表の一番下にある通り、一日あたり2000カロリーの食生活をおくると仮定した場合の、各栄養素の必要摂取量に対する割合を表しているようです。

博士 ふむ、ちゃんと102mg含まれているのに0%というのは確かに妙じゃな。

助手 ええ、博士。これはどちらかが間違っているとしか考えられません。しかし、どちらが正しくて、どちらが間違っているのかワタクシには判断つきかねます。博士はいかがお考えでしょうか。

博士 ううむ。これは難しい問題じゃ。

助手 博士ほどの偉大な方でも解決できないんでしょうか。

博士 いや、まてよ。ふむふむ、そうじゃ、うん、そうに違いない。

助手 博士、おわかりになりましたか。

博士 うむ。よいか。この0%という表記にはな、1%未満という意味も含まれるのじゃ。

助手 どういうことでしょうか。

博士 つまりじゃな、102mgのカルシウムは、必要摂取量の0コンマ何パーセントかに相当するのじゃよ。しかし、成分表は1%単位で表示することになっておるため、数字が丸められて0%になってしまったのじゃろう。小数点以下は切り捨てるのか、それとも四捨五入するのかはわからぬがな。

助手 しかし博士、お言葉を返すようですが、もし小数点以下が切り捨てられたと仮定しますと、アメリカ人が1日に必要とするカルシウムの量は

となり、一日に10g以上のカルシウムが必要だという計算になってしまいます。これはニッポン人の必要摂取量の実に17倍です。ましてや、四捨五入なら更にこれの倍です。本当にアメリカ人はこんなに大量のカルシウムを必要とするんでしょうか。

博士 アメリカ人はガタイがでかいからのう、それくらいのカルシウムは必要じゃろう。彼らのあの筋肉を見たまえ。あの美しい肉体、もとい、大きな肉体を支えるためには、骨も頑丈でなくてはならんはずじゃ。大量のカルシウムを摂取する必要があるのも当然のことじゃて。

助手 あまり大きくないアメリカ人もいますが...

博士 いや、ワシは大きくて逞しい男が好きじゃ。

助手 え?

博士 い、いや、何でもない。

助手 ところで博士、そこの机の上にあるのは何ですか?

雑誌の画像

博士 うっ、こ、これはじゃな、ただの雑誌じゃ。

助手 たしかこれは、ブラッドピットのすっぽんぽんヌードが載っているやつではありませんか。ほら、表紙に書いてあります。書店の雑誌棚でも目立つように一番上にデカデカと。

博士 そ、掃除のオバちゃんの忘れ物じゃ。

助手 この研究所には掃除のオバちゃんはいませんが。

博士 きょ、今日から雇ったのじゃ。あとで君にも紹介しておこう。い、いや、その必要はないな。今日一日限りで辞めることになっておる。

助手 ...ありがとうございました、博士。

博士 うむ、わからないことがあったら何でもワシに尋ねに来たまえ。


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