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ウサギの卵 |
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博士、博士、ちょっとお伺いしたいことが...
うむ、なんじゃね?
へへへ。
なんじゃ、薄気味の悪い。
ええっとですね、博士。この絵をご覧下さい。ある所に、山が二つありました。
二子山じゃな。ホーク1号が飛び出したり、ニッポン中の電力が集められたり、世界一美しい水死体が上がったりする場所じゃ。
違います、博士。とにかく山が二つあると思ってください。
なんじゃ、つまらんのう。
でですね、二つの山の間にロープウェイが渡してあります。
ゴンドラの上に千葉真一が乗っておらんが。
また古いハナシを...
あの頃の千葉真一は凄かったぞ。「キイハンター」で共演したのが縁で野際陽子と結婚して、ジャワカレーのCMにも二人揃って出ておった。全くお似合いの夫婦じゃわい。
もうとっくの昔に離婚してますよ。
なんじゃと、それは初耳じゃ。
ワイドショーぐらい観ておいてくださいよ、博士。
谷隼人と大川栄子はまだ夫婦なのか?
あの二人は結婚してません。
それも初耳じゃ。
とにかく、博士、ロープウェイがあるんです。で、この二つの山の間の谷に、卵が一個落ちていました。
何の卵かね。
それが問題なんです。これはニワトリの卵でしょうか、それともウサギの卵でしょうか。
他の生物の卵であるという可能性はないのかね。例えばツインテールの卵とか。そうだとしたら、マットガンで焼いたぐらいではダメじゃぞ。むしろ孵化を促進してしまうことになるからな。いちばん確実なのはスパイナーかN2地雷で一発ドカンと...
いや、ですから、博士。この卵はニワトリの卵でしょうか、ウサギの卵でしょうか。
うーむ。これは難解な問題じゃ。
そんなに難しいですかね。
な、なんじゃと。では君にはわかるのかね。
ええ。ゆうべ5時間足らずで解きました。
ふぬう。君にわかるものがワシにわからぬ筈がない。
その通りです、博士。どちらの卵でしょうか。
ううむ... うん、うん、そうか、そうじゃ、わかったぞ。
やっとおわかりになりましたか、博士。
「やっと」は余計じゃ。うん、これはな、ウサギの卵じゃ。
...博士、ウサギの卵というものをご覧になったことがおありですか?
馬鹿にするでない。あの黒くて小さいやつじゃ。
博士、あれはウサギのうんちです。
なんじゃと。あれは卵ではないのか?
違います。
しかしじゃな、何年か前、ニッポンのコウベという街に行った時、ワシはウサギの卵を見たぞ。
はあ?
何かよい土産物はないかと思ってな、デパートの地下食品売り場に入った時のことじゃ。
そこでウサギの卵を売っていたんですか?
そうじゃ、美味そうじゃったので店員に「コレハ、ナンデスカ?」と尋ねてみた。コウベに行く前に、ベルリッツの創始者の孫が書いた会話集でニッポン語をちゃんと勉強しておいたのじゃ。すると、店員はなんと英語で答えてくれおった。"These are rabbit's eggs" とな。ワシは驚いた。ニッポン人は誰も英語を喋れないとばかり思っておったからな。そこで聞いてみると、その店員は若い頃ベネズエラ領事館でタイピストとして働いていたそうじゃ。領事から「アナタ、ヨク仕事シマス。領事館ニ住ミ込ミデ働キマセンカ?」と言われたので「羅紗緬にされたらかなわん」と思って辞めたということじゃった。
あの、博士、そういう楽屋オチはどうでもいいので、ウサギの卵の話を...
うむ。とにかくじゃな、店員は確かにワシに「これはウサギの卵です」と言った。一見すると菓子のようでもあったが、卵のように見えなくもなかった。いや、あれは間違いなくウサギの卵じゃ。
それはコウベにしかないものなんでしょうか。
いや、ニッポン全国にあるはずじゃ。ただ、地域によってはウサギの卵を「べびい・かすてら」、つまり「乳児の城」と呼んだりもするらしい。なにしろ「乳児の城」じゃよ。あれは卵に間違いない。
カンサイ地方に縁のない人は、この会話が理解できないんじゃありませんか、博士。
それもそうじゃな。が、学問の進歩のためには多少の犠牲は止むを得んのじゃよ。
...ありがとうございました、博士。
うむ、わからないことがあったら何でもワシに尋ねに来たまえ。