博士
博士

コンスタンチン君

助手
助手


助手 博士、博士、ちょっとお伺いしたいことが...

博士 うむ、なんじゃね?

助手 博士はコンスタンチン君をご存知でしょうか。

博士 うむ、知っておるとも。パスポートも持たずにニッポンに堂々と密入国した露スケのガキじゃな。

助手 いえ、あの、博士。パスポートを持っていなかったのは事実ですが、あれは密入国ではなくて人道的見地による超法規的措置というやつでして...

博士 ふん、見解の相違というやつじゃ。それでコンスタンチン君がどうしたのかね。

助手 はい、コンスタンチン君は大火傷をサッポロで治療して無事に帰国したわけですけど、その後、同じように瀕死の大火傷を負った子供が2・3人、立て続けにサハリンからサッポロに運ばれましたよね。

博士 ♪一人の露スケが二人の露スケに、三人に四人、五人、十人、というやつじゃな。

助手 博士、ひょっとして『忍法・KGBん身』なんて言うんじゃないでしょうね。

博士 うぬ、君に見破られるとはワシもそろそろ老いぼれてしまったかのう。ならば、こういうのはどうじゃ。♪イタ公のスタローンちょっと見なれば〜

助手 いい加減にして下さい、博士。

博士 いや、すまぬすまぬ。ちょっと悪ノリが過ぎたようじゃわい。で、何の話じゃったかの。

助手 コンスタンチン君と、その後に続いた子供たちのことです。

博士 おうおう、そうじゃったそうじゃった。

助手 ちょっと妙なんです。

博士 何がじゃね。

助手 先ほどお話した通り、立て続けに数人の子供がニッポンに緊急移送されて治療を受けました。ところが、ある時から、それがぷっつりと途絶えてしまったのです。

博士 サハリン州政府がモスクワから怒られたのではないのかね。大国ロシア、いや、あの頃はまだソビエトじゃったな、大国ソ連ともあろうものが、子供の火傷もろくに治せないと思われるのは恥じゃから、安易にニッポンに頼るのはやめろ、とかなんとか。

助手 ええ、確かに旧ソ連にとっては一人や二人のガキ、もとい、子供の命などよりも、国家のメンツの方が大切だったかもしれません。でも博士、コンスタンチン君のことがニッポンで報じられるや否や、彼のもとには巨額の募金が寄せられたそうです。その後に続いた子供たちにも、まぁ金額はぐっと減りましたけど、やはり結構な額のニッポン円が集まりました。

博士 すると、外貨不足に悩んでいた旧ソ連にとって彼らは貴重な収入源だったと言えるのじゃな。

助手 はい、その通りです。おカネはメンツと同じぐらい大切ですから。『いやぁ、モスクワだったらニェットプロブレムなんすけどね、なにせサハリンはド田舎なものでちょっと治せないんです。助けてくださいよ、ヤーパンの旦那、ハラショー、ボルシチ、スパシーボ』とか何とか言うだけでゼニになるんですから、別に止める必要はなかったんじゃないでしょうか。

博士 それはもっともな話じゃ。

助手 では、なぜぱったりニッポンに行かなくなったんでしょうか。

博士 うーむ、たぶん、火傷するかもしれないシチュエーションが減ったのじゃろう。

助手 えーっと、それはサハリンの人々が火傷防止の対策をとったということでしょうか? ストーブを柵で囲うようになったとか、風呂に水温計を付けたとか。

博士 いや、そうではない。そんなことをする必要もなくなったのじゃよ。

助手 どういうことでしょうか。

博士 ソ連時代の末期、あの国の経済状態はドン底じゃった。モスクワですら食料が足らない、燃料が足らない、電力が足らないで、大変じゃったと聞いておる。ならば、ド田舎サハリンに至っては、ストーブも焚けぬ、お湯も湧かせぬ、という状態であったに決まっておる。これでは火傷したいと思っても無理な話じゃろうて。

助手 はぁ。

博士 かくて露スケどもの外貨獲得の野望はついえたのじゃよ。

助手 ...ありがとうございました、博士。

博士 うむ、わからないことがあったら何でもワシに尋ねに来たまえ。


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