謎の有翼大怪獣、紐育に現わる


マンハッタンを蹂躪する有翼大怪獣

ゴジラの恐怖も冷めやらぬニューヨークに、今度は巨大有翼怪獣が突如飛来!! 今度こそマンハッタンは壊滅か!?

と、いう冗談は置いといて。それにしてもこの鳩、一体どうやってここまで登ってきたのか? 地上から300メートル以上、強い風がびゅうびゅう吹いているエンパイアステートビルの展望台なのに。


というわけで、ニューヨークへ週末旅行してきました。夫が前日にふと思い立っての気まぐれ旅行。いつも我が家の行事は直前に決まる。結婚が決まったのも結構突然。毎年我が家がなんとか正月に帰省できていたのはひとえに姑のお陰。彼のポリシーは『行けば何とかなる』なのです(そのぶん数々のトラブルに巻き込まれもする)。

で、いつものように哀れな我が家の愛車『ベル号』で出かけました(酷使に耐えてるなぁ)。『飛行機で行けば疲れずに、たくさん観光できるのにぃ(疲れると夫はすごく不機嫌になる)』と私がいうと、夫は『20分の1の費用で行けるよ』と私を説得します。まぁ、いいか.... 私は疲れないし...

ニューヨークになんか、ぜーったい行くもんかとずっと思っていました。暗くて怖い犯罪都市で、濡れた細い道しかなくて、建物はどれも煤けていて、街行く人はみんなせかせかとして意地悪なところというイメージがアタマを離れず、『無事に家へ帰れるのだろうか?』と一大決心をして出かけました。夫は『ピッツバーグの百倍は怖い』というし。

ナンバープレートのないクルマ1ナンバープレートのないクルマ2

なぜかナンバープレートのないクルマ(よく見ると後ろの窓ガラスの左上にナンバープレート替りらしい張り紙)が目立つフリーウェイを、テレサ・テンや本田美奈子をBGMにひたすら東へ。

いつも通るフリーウェイの休憩所は普段の週末の3倍ぐらいの人出。ということはニューヨークの中はもしかして、おのぼりさんだらけ? これなら少しは安心か。昔から言うではありませんか『木の葉を隠すなら森の中。おのぼりさんを隠すならおのぼりさんの中』と。

400マイル(約640Km)弱の道のりを、休憩をはさみながら8時間かけて走破、魔都・ニューヨークに到着。ターザンも行った、キングコングも昇った、ジェイソンも暴れた、ゴジラも壊した。道を歩けば目つきの悪い兄ちゃんに囲まれてホールドアップさせられたり、いきなりぶつかってきて、いちゃもん付けた挙げ句に金品を要求されたり、『ドラッグいらない?』と声をかけてくるのがそこいらにうろうろしてる、恐怖の都。

夫の計画では、マンハッタンは駐車料金やホテル代が死ぬほど高い上に、街中は一方通行だらけ、クルマの量と運転の荒さも尋常ではないので、クルマで乗り入れたりしないで、郊外の空港近くのモーテルに泊まって、マンハッタンに行く際には空港の駐車場に愛車を停めて(後でモーテルの空港行き送迎バスを使えば駐車場代もいらなかったことに気付く)、直通バスで街中へ向かう。こうすれば、ちょっと時間はかかるが安あがりで安全(途中誰も乗り込んでこないし、怖いところも通らないし、遠回りもされない)だとのこと。でも、バスって怖くない?

しかし、空港でバスに乗り込んだ途端、不安は霧散しました。夫婦連れや一人旅の女性、善良そうなおじさんばかり。なかでも極めつけは、大学生らしき白人のお兄さん。彼は自分の行きたい場所をリストアップした紙を握り締め、前方に見えるビル群を指差して『おっ、マンハッタンが見えてきたぞ(実はマンハッタンじゃなくて近郊の別の小都市のダウンタウンだったんですが、私も到着すぐに同じ間違いをしていた)』とインド系の友人と一緒に大騒ぎ。彼の前の席に座っていたおじさんが親切に『あれは違うよ。ところで観光かい?』と話し掛けたところ、『うん。行くつもりなのは、ここと、ここと...』と自分の行動予定を大声で説明し始めました。よしっ!! 最初の仲間発見!!

マンハッタンに到着してバスを降りると、確かに『ピッバーグの百倍』気合の入った黒人さんやホームレスが歩いています。しかし、しばらく行くと道端で記念撮影をしている家族連れが... ここもあそこも観光客だらけ。どうも今は観光シーズンで、おのぼりさんが物凄く多い時期のようです。アメリカは景気が絶好調、失業率も20数年ぶりの低さらしいですし。夫曰く『初めて行った6年前の冬はもっともっと怖いとこだった』とのこと。

エンパイアステートビルの展望台から

おのぼりさんなら必ず行かねばならないエンパイアステートビルの展望台へ。そうか、ここがエンパイアステートビルかぁ。私はずっとクライスラービルをエンパイアステートビルだと思ってました。

あれに見えるはパンナムビルだぁ(今は違う名前ですけど)、『兼高かおる世界の旅』だぁ。あの番組を見て『あんなところへは一生行くこともないだろうなぁ』と思っていたんだけどなぁ... 感動〜。

高い展望室につきものの、ちょっとセンスがずれている土産物に食指を動かす私に『そんなもの東京タワーの土産物と同じで、恥ずかしい物なんだぞ』との夫の一言。失礼な、東京タワーの土産物は松任谷由美の歌にも歌われている、おしゃれなプレゼントなんだぞ。でも、エンパイアステートビルの土産物は確かに恥ずかしいものが多い。でも、その5分後、エンパイアステートビルの置物を握り締めて『マミー、これ買ってぇ』と叫ぶ子供やら、『水がこぼれないびっくりグラス』を持ってレジに並ぶ、流行りの格好をしたティーンエイジャーの娘さんを発見。『水のこぼれないびっくりグラス』を見たのなんて何十年ぶりだぁ? 誰が買うんだこんなもの、と思っていたら、まさか目の前で買う人がいるとは。

馬車1馬車2

セントラルパークをたくさん走っている(というか歩いている)観光用の馬車。どの馬にも、ウンチ受けがついています(ときどきこぼれてますけど)。おかげで路上は奇麗なのは良いことなんですが、馬車が側を通るとけっこう匂います

しかし、アメリカって国は観光地に馬車を走らせるのが好きだなぁ。ボストンでもワシントンDCでも見たぞ。ピッツバーグみたいな田舎町のダウンタウンにもいるし。日本の観光地における人力車みたいなもんか? でも、ここの馬車の多さは全米一でしょう、多分。セントラルパーク周辺に限っていえばイエローキャブといい勝負していたし。

好景気と良い気候のお陰で、セントラルパークも5番街高級ブティック地域も観光客だらけ。みんなのんびりと散策していました。自然史博物館でダイヤモンドを堪能したあと、お目当てのFAOシュワルツへ。なにこれ、銀座の博品館の方がずっと面白いじゃん。高級玩具店と聞いて期待してたのにぃ。まだ持ってないマドレーヌちゃんの着せ替えを全部揃えられると思ってたのにぃ。『ティファニーで朝食を』バービーがあると思ってたのにぃ(今考えれば、すぐ近くのティファニー本店へ行けばあったかも知れない)。FAOだけが楽しみで怖いのを我慢してニューヨークへ来たのにぃぃぃ〜。別館がどこかにあるのかも知れないが、そんな案内どこにも書いてなかったし。

ボトルマンの痕跡

ゴジラが営巣したマジソンスクエアガーデンの真ん前の歩道にて。ちょっと判り難いんですが、紙袋に入ったビールか何かの瓶が割れてます(右下には破片が)。悪名高きボトルマンの仕事の跡なのかも。よそ見をしている観光客にわざとぶつかって袋を落とし『お前のせいで割れた。高かったんだぞ、弁償しろ』と迫るので日本でも有名なった人達ですね。でも、それらしき人は見なかったな。夜出るのかな? 夫によれば、6年前の冬には、真っ昼間のタイムズスクエア周辺にうじゃうじゃいたそうです。

ずうずうしい伝票

お昼は、夫のリクエストでラーメン(ピッツバーグにはラーメン屋さんがない。日本人人口が少ないので無理も無いけど。でもなぜ、わざわざニューヨークに来てラーメンなんだ? 『日清のラーメン屋さん・函館』じゃあだめなのか?)。味は中の下(まえに勤めていた会社の、社員食堂のラーメンよりは上か?)といったところ。マンハッタンにしては安いからあまり文句は言えないか。で、伝票を見ると『サービス料の目安』なるものが。ああ、これ、お正月にオーランドの日本食もどきレストラン(YAMASA という名札をつけた中国人のコックさんが『コバワ』と挨拶しながら鉄板焼きを焼いてくれた)でも見たな。あの時は同じグリルに座ったアメリカ人のおっちゃんも納得しがたい表情でウェイトレスに説明を求めていたなぁ。

夫曰く、『本日のお薦めを説明してくれたり、料理の組み合わせの相談に乗ってくれたりしたならまだしも、仏頂面でラーメン2杯運んだだけで17%も欲しがるつもりか。だいいち、チップの額は客が決めるもんだ。店が指定するなぞ言語道断』とのこと。怒り狂った夫(発火点が低すぎるとも思うが)はクォーター(25セント硬貨)1枚だけ置いて出ようかなどとも思ったようですが、まぁ、ここは観光地だし、他所から来た人間がコトを荒立てても仕方ないということで、『この通りで結構です』と、嫌味な言い方で言い値を払って出ました。それにしても、わざわざこんな日本語のスタンプを押すということは、日本食にほっとした日本人旅行者がチップを払い忘れることが多いからなのかも。

しかしなぁ、前回のオーランドで学習した筈なのに、懲りずに日本食のフェロモンに誘われてしまうとは、男の悲しい性なのかも。ピッツバーグの日本食レストランには、こんな伝票は無いし、あんなムッとした従業員もいないから、観光地ではそんなもんじゃないということを忘れちゃうんですよね。

ラーメン店の前には、日本人観光客目当てらしいTシャツの露店。そして、路上に座り込んでいた黒人さんが低い声でなにやら話し掛けてきました。ク、クスリの売人か!? 無視して通り過ぎようとしたらもう一度話し掛けてきました。『ロレックスいらない?』。日本人ってそんなにロレックス好きなの?

陽が落ちる前にマンハッタンをあとに。やっぱり空港行きの直通バス。行きと違って、今度の乗客はアメリカ人のおじさんと私達の合計3人だけ。バス停には係員がいるとはいえ、路上なので夜中は一人だとちょっと怖いと思います。

モーテルのテレビ

モーテルは郊外の幹線道路を適当に流してれば簡単に見つかります。わりと小奇麗なところを見つけたので、周囲を数ブロックぐるっと回って、治安が悪くなさそうなことを確認してからチェックイン。部屋に入ってみると、狭い場所を有効に使うためか、TVがこんな高い位置に。まるで日本のカラオケボックス。私も夫も何度かテレビにアタマをぶつけました。ちなみに画面に映っているのは若き日のジェームズ・ブラウンです。

モーテルの看板モーテルの看板アップ

あとになって、泊まったモーテルの近くにもっと面白そうなモーテルを発見。看板にデカデカと『8の字バスタブ』『ロマンチックルーム』『ハート型バスタブ』『大型バスタブ』『二人で入れるバスタブ』『ウォーターベッド』『円形ベッド』。きゃぁ、日本のラブホテルみたいだ。アメリカのモーテルは基本的に、家族連れの旅行者や長距離トラック運転手のためのものなんですが(私達が泊まったモーテルでは、チェックアウトの時、パイロットやスチュワーデスの制服を着た数人と遭遇しました)、まぁ、日本のラブホテルのような使い方をする人々もいるんでしょう。このモーテルはそういう人達にアピールする設備が自慢のようです。新婚旅行のお二人さんとかも泊まったりして。マンハッタンのゴージャスなホテルでの宿泊も楽しいけど、愛があれば、これはこれで楽しいハネムーンかも。ちっ、こっちに泊まってれば話のタネになったのにな。ちらっと見た限り、そんな怖そうな客層でもなかったみたいだし。

で、怖い思いもせずに無事に帰ってきました。まぁ、5番街の一番賑やかなところやセントラルパークの南側周辺をくるっと歩いてまわった『初心者コース』だったんで、もっとディープなニューヨークを知っている人からするとまだまだなんでしょうが。自由の女神には行かなかったけど、あんなものは置物で充分だと思う(多分)。歩きまわって足がパンパン。疲れたぁ〜。


写真館USAの目次へ戻る

海の家トップページへ戻る