日々是口実 2005年1月〜3月

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(上の方が新しい出来事です)

某月某日
夫が手術をする。

あまり急を要しない手術だったため、執刀医の先生の都合で何度か延ばされた挙句、本人負担3割になった途端に手術日決定。ムカツク。

で、その時、もらって帰ってきたのが『手術準備のしおり』。

う〜ん、こんなのどっかで見たなぁと思ったら、結婚式だよ。そう、結婚式みたいに『退院までの費用見積もり(概算)』を入院前に出していただければ、入院までに繰リ返された夫との離婚寸前の大喧嘩も避けられたのに...(っていうか、もう半分以上、私、離婚決心準備完了。あと一押しだよ夫。もうすぐ他人だ)

手術前にいくつか検査をこなさないといけないので、夫、手術日の1週間前に入院。

手術4日前に、『ご家族への説明』を聞きに病院へ。

執刀医の先生の説明によると、『腹腔鏡を使う手術なので傷は小さくて直りが早いし、傷跡が小さいので目立たなくて、夏なんかビキニが着れますよ』と仰りますが、こいつおっさんなんで、ビキニ(男性物ビキニパンツ含む)着て欲しくないんですけど...

手術前日。内臓の手術なので、お腹まわりの毛は全部剃ります。前出の『手術準備のしおり』にもこうありました。

『最小限必要な部分』とありますが、夫の場合、胸から太腿にかけて全部。

ところが、看護師さんに剃られて『嬉し恥ずかし生まれたての私』というのはこの病院ではないそうで、お腹まわりは全部自分で剃って、看護師さんは本人の手が届かない背中の毛(麻酔のチューブをとめるテープを背中に貼るため)を剃ってくださるだけ、なんだそうです。夫、『ほっとしたけど、ちょっとがっかり』と申しておりました。ただ、素人の夫が自分できちんと剃れたかどうかのチェックはあったので、しっかり見られたとのことです。で、『女性用の産毛剃り用電動かみそりってすばらしい剃り心地』と感動しておりました。感動されても、もう使うことは無い(ていうか使って欲しくない)と思う。

そして手術当日。

ブッチして逃げたいとこだが、貴重品とか眼鏡とかを預からんといけないらしいし、近くに住んでいる身内(まもなく他人)は私しかいないので、行かざるを得ない(でも、入院費の保証人としては認めてくれない。そういえば入院時のアンケートに『一番頼りにしている人』と言うのがありまして。『これってどういう意味ですか? なんかあったときに病室に呼ぶ優先順位決めるためとかですか? 手を握り締めて”頑張って!死なないで!”と呼びかける役目を誰にするかということですか?』と質問したところ、看護師さんに『え〜っと、看病とか入院費とかで頼りになるかた、ということです、多分』と自信なさそうに返されちゃいました。う〜ん、一人に絞れないご家庭多いんじゃないかなぁ。まさか独身者が『看病:○田○郎(職場の同僚)、入院費:○○生命(入院保険)』って書くわけにもいかないだろうしなぁ)。

手術開始の2時間ぐらい前に病院に着いて、夫の病室へ... いない! ベッドも撤去されている。げーっ、時間まちがえた〜? それとももう死んじゃった〜? ベッドは血まみれになったから撤去された〜? え〜、どこに連絡しなきゃいけないんだ〜、保険いくら入ってたっけ〜、再就職先探さなきゃ〜、などと考えた後、『ああ、ナースステーションで聞いてみるか』と、ちょっと冷静になる。

で、ナースステーションに声をかけていると、隣の食堂から『ここ、ここ』とマヌケな声が。なんでも、このフロアの病室全部にワックスがけするのでベッドを撤去されていたとかで、夫、鼻からチューブを差し込まれた状態(チューブは喉を通って胃の底まで伸びているらしい)で食堂の椅子に座っている。手術2時間前の人間(まぁ、殆ど健康体なのだが)を外に放り出すとは...

ワックスが乾いてベッドも運び込まれたので、病室へ。

そこへ看護師さんがストッキングを持ってやって来る。ああ、これ、手術準備のしおりにあったやつだ。

手術中に『エコノミークラス症候群』みたいなことになって血栓ができるのを防ぐために履くそうで、入院前に脚の太さは採寸済み。

看護師さん、開口一番、夫に向かって『え〜っと、ストッキング履いたご経験は〜? (しばらくにこやかに返事を待つ) ないとは思いますが(ひっかけか? ひっかけなのか? でも、防寒用男性ストッキングとか野球のストッキングとかのことかも...)、こちらを履いていただきますね〜』と出してきたのが、一応肌色(でも糸は多分50デニール以上のババタイツ色)の、一部補強つきのストッキング。

でもこれ、ジェンティルドンナ(バブル期、明菜ちゃんが履いてたんで流行った、脚をぎゅっと締め付けて細く見せるストッキング。当時一足1万5千円ぐらいした。伝線しにくいが伝線すると潔いストッキングと言われていた。つまりマニキュアぐらいじゃ止まんないんすね伝線が。でも、その強力さにもかかわらず、透明感があった)並みの強力ストッキング。

夫、一人では履けず、看護師さんと二人がかり。ちなみにあまりに強力なので、つま先から踵にかけて補助ストッキングを履いて、すべりをよく(それと伝線よけ?)してから本体を履きます。

パッケージはこんな感じ(中にあるのは補助ストッキング)。

謎のロゴが。
なぜ金のキスマーク。

ラベル見ても、どう考えても医療用具だよな、これ。半端な長さだし、つま先ないし。向こうではなんか美容目的で使うのかなぁ。セルライト防止とか...

なんとかストッキングを履き終えた夫はパンツを脱ぎ(あ、和式浴衣のような手術着はちゃんと羽織ってます)、私にそれを手渡して(ゲッ)、ストレッチャーに乗せられて手術室へ。

手術開始。

事前の説明では『3時間ぐらいで終わります』ということだったのに、4時間半たっても出てこない。

この病院、手術中に家族が待つのが病棟の食堂しかないのだが、ここからナースステーションが丸見えで、もう看護師さんの動向が気になって気になってイライラする。

前日にテレビで見た手術の失敗事例が、やはり『手術時間かかり過ぎから執刀ミス発覚』というものだったのを思い出して、もうパニックで暴れ出す寸前。

『ああ、手術室の入り口に、抽出式コーヒーの自動販売機みたいに ”麻酔中→開腹中→病巣摘出中→縫合中” とか順番にランプが点くといいのにぃ』と何度思ったことか。それと、核家族で友達も少ない人のために『一緒に手術を待ってくれて、いざと言う時、一緒に病院側に”今、経過はどうなんだ”と文句言いに行ってくれる人』なんて商売これから流行るかもなぁ、と思ったり(まぁ、自分で聞きに行きゃ良いんですけど)。

そこへやっと手術室から看護師さんがやって来て、手術が終わったのでこっちへ来いとのこと。

え〜、この式次第(術次第?)とはちょっと違って、手術待合室に案内される(なんだあるんじゃん。でも、殺風景だし、寒いし、静かだしで、一人でいるのはちょっと嫌かも)。そこで執刀医の先生の説明を受ける。

ああ、さんざん皆に聞いていたが私も見せられるのかよ、『切り取った内臓』... うわぁ〜、ガーゼのかかった膿盆持ってるよ先生...

で、見せられました。血まみれの『胆嚢の開き』と、同じく血まみれの『胆石2個』。

夫、胆石だったんですよ。『ああっ、その胆嚢見たかったなぁ、なんでデジカメで撮ってくんなかったの』と後で言われましたが、あそこで写真撮るなんてできるかい。お産じゃあるまいし。

石のほうは、手術の翌日、きれいに洗ってくださったものを夫が貰ってきました。人によっては大変美しい白いのが出たりするそうですが、腹黒い夫からはもちろんこの色。

別名マリモブラック。血まみれの時は黒飴(大きさも)だったんですが、洗って乾いたらこの色に。

胆嚢と一緒に見せられた後、看護師さんが『結構おおきっかったですね』と笑ってました。ちなみに乾いた後の最大直径が約17ミリ。う〜ん、標準はよくわからんのですが、まぁ、ダチョウでもないのにこんな石が体内に常在するっていうのは嫌だなやっぱり。

姉に手術の報告をすると、『で、石ってどんな匂いするの』と聞かれたので、『鼻つけんのも嫌!!』と言ったら、『普通嗅がない?』って言われちゃいました。そういうもんなんでしょうか?

ちなみに夫が嗅いだところ、『海の匂いがした』そうです。さすが私の知り合いから『ポエマー』と評されただけのことはあります。『シュコー、人間はやっぱり海から生まれてきたんだねぇ〜、シュコー』(by立松和平)。

嫌々ながら嗅いでみると、私には乾燥若布(灰干しタイプ)あたりの乾物の匂いとしか思えんが。まぁ、これも海の匂いっちゃ、海の匂い?

それから姉よ、『体に悪いところがあったから短気だったんだよ旦那さん。手術終わったら性格変わるよ』と言っておられましたが、駄目でしたよ...

で、退院後、夫は私に『チキン〜』と言われると『ええ、肝っ玉取っちゃいましたから〜』と開き直るようになりました。

あれからひと月。4つ開けられた穴の縫合跡のうち、いちばん大きな臍下のものはこんな感じに。

これじゃまだビキニは着れそうにない。

ちょっと落描きしてみました。

ともだち!

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