博士
博士

ドンドンブーツ

助手
助手


助手 博士、博士、ちょっとお伺いしたいことが...

博士 うむ、なんじゃね?

助手 あ、博士、こんな夜遅くまでネットサーフィンなどなさって。 どうせまたろくでもないものをご覧になっているんでしょう。 いい加減にしないと明日の仕事に差し障ります。

博士 夫のネット中毒に怒る30代主婦のようなセリフじゃな。で、用は何かね。

助手 はい、実はこの画像のことなんですが。

博士 このブーツを履いたニッポン人がどうかしたのかね。

助手 これ一枚だけではありません、これも、これも、この画像も。

博士 うっ、よくこんなに沢山ブーツを履いたニッポン人の画像ばかり集めたもんじゃな。 君はひょっとしてブーツフェチかね。

助手 博士こそ、以前ニッポンの某テレビ番組の真似をしてインターネットセクション を開設したと思ったら、『すくうる水着』とやらを着たニッポン人の 画像ばかり何百枚も集めておられたではありませんか。

博士 な、何を言うのかね、君は。あれは研究の一環じゃ。 君のような浅学の徒にはわからんかもしれんがの。

助手 確かにワタクシにはよくわかりません。それはともかくとしてですね、博士。この画像のことなんですが。

博士 ブーツなど別に珍しくもなかろう。

助手 いえ、博士、よーくご覧になって下さい。何かお気づきにはなりませんか?

博士 そう言えば、ずいぶんと靴底がぶ厚いようじゃな。

助手 ええ、ヒールだけではなくて靴底全体がゆうに10センチ、つまり4インチはあります。 中には20センチ、つまり8インチ近いものも見受けられます。

博士 駅の階段などではドダンドダンとうるさそうじゃな。

助手 はい、何を急いでかエスカレーターを駆け降りたりされた日には、 周囲の人々に殺意さえ抱かせる程の騒音を撒き散らすそうです。

博士 ふうむ、最近のニッポン人はみんなこんなブーツを履いておるのかね?

助手 いえ、全員ではありません。 主に10代後半から20代までの女性が好んで履いているようです。

博士 要するにケツの青い小娘どもの履き物ということじゃな。

助手 若さに嫉妬を覚える30代主婦のような物言いですね、博士。

博士 どうやら君はワシに悪意を持っておるようじゃな。

助手 滅相もありません。とにかくですね博士、こんな歩きにくい異様な靴を わざわざ履く理由がワタクシにはまったく...

博士 わからないかね。

助手 はい。

博士 彼女らはな、宇宙人じゃよ。

助手 は? 博士、今何とおっしゃいましたか。

博士 宇宙人、じゃ。

助手 しかし、博士。つい先日、ニッポンは特定の宇宙人の縄張りになっていないと おっしゃったばかりではありませんか。

博士 うむ。確かにニッポン政府は特定の宇宙人と手を結んではおらぬ。 しかしじゃな、民間レベルではすでに宇宙人は大勢入り込んでおる。 あちこちの星からやってきた宇宙人が、それぞれの目論見を持って ひとまず平和共存しておる。

助手 本当ですか、博士。

博士 君は世界的秘密結社が広報活動の一環として映画を制作しているという話を 聞いたことがないかね。

助手 えーっと、ゴミのポイ捨てはやめましょう、とかでしょうか。

博士 違う。よいか、フリーメーソンなどの世界的秘密結社はじゃな、 何と言っても世界的じゃから規模が大きい。人数も多い。 世界各地に『草』として散らばっておる構成員全員に何かを 伝達するのは大変なのじゃ。そこで、彼らは構成員に伝えたいことを 映画にして世界中で上映するのじゃよ。

助手 はぁ。

博士 例えばじゃな、君も大好きな『ターミネーター』。あれは、あのような 高性能ロボットの開発に成功したということを知らせるために 制作されたのじゃ。

助手 ...

博士 『V』や『未知との遭遇』もそうじゃ。あれは、宇宙人が地球に 来ておるということを伝達するための映画なのじゃよ。

助手 しかし博士、『V』も『未知との遭遇』も、我が合衆国が舞台です。 ニッポンの話ではありません。

博士 ふっふっふ、君は『ウルトラQ』を観ておらぬのか。

助手 その頃はまだ生まれておりません。再放送にもちょっとかすった程度で...

博士 では、今度LDを探してみるのだな、第21話『宇宙指令M774』じゃ。

助手 ああっ、それなら見た記憶があります。友好的な宇宙人の話ですね。

博士 そうじゃ。 あの駅の階段をドダンドダンと鳴らす小娘達はルパーツ星人なのじゃ。

助手 ですが、博士。ルパーツ星人は確か編み上げサンダルを履いていたのでは ありませんでしたか。

博士 ところがじゃな、最近になって新事実が判明したのじゃよ。 ニッポンにおる宇宙人は進化するのじゃ。

助手 え!?

博士 その事実は映画ではなくテレビアニメを装って伝達されたのじゃがな。 そのテレビアニメを観たニッポンのガキ、もとい、子供達はパニックに 陥ってしまい、泡を吹いて救急車で運ばれた者も多かったと聞くぞ。

助手 いや、あの、博士。あれは宇宙人ではなくてモンスターですが。

博士 細かいことを気にするでない。ニッポンでは宇宙人と怪獣はペアなのじゃ。

助手 はぁ。

博士 とにかくじゃな、ルパーツ星人は進化するのじゃよ。 『編み上げサンダル形態』から始まり、次に『ルーズソックス形態』、 そしてこの『ストレッチブーツ形態』にな。 しかもじゃ、形態が変わると同時に初期の温厚な性格を捨て、 どんどん性悪かつ狡猾になっていくのじゃ。このままではニッポンが世界に誇るヤマトナデシコの評判は地に落ちてしまうじゃろうて。

助手 これは大変です、博士。早くこのことをニッポン政府に連絡しなければ。

博士 残念ながら、もう手後れじゃ。 彼らの『クレオパトラ計画』は既に完了直前じゃ。 この危機を予言した偉大なる医学者も今は亡い。 彼の予言は学会から完全に無視された。

助手 その医学者のお名前は...

博士 確か、オサム・テヅカという名前だったと思う。

助手 ...ありがとうございました、博士。

博士 うむ、わからないことがあったら何でもワシに尋ねに来たまえ。


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