日本の歩き方

鵜飼



 
A good obscure sight to claim to have seen is the centuries-old cormorant fishing which takes place on the river Kiso and elsewhere in central Japan. Only a true connoisseur would know about it. The activity itself is fairly dull - a bird-keeper dressed in traditional clothes pilots a boat carrying several trained cormorants on string leashes. The cormorants are trained to catch delicious ayu - sweetfish - which rise to the surface attracted by the bundle of burning straw waved over the prow by some assistants. When the birds snatch the fish, the cormorant-master pulls the birds in tightly by the leash, which half strangles them and enables him to pry the fish out. The thing to talk about is not the catching of the fish but that fact that it is then served on the tables of the restaurant boat that follows behind, full of spectators who've paid eighty bucks for the privilege of eating regurgitated fish.

Quoted from p.22, "Bluff your way in Japan", Robert Ainsley, Centennial Press, U.S.A., 1989.

見たと言いふらすのにぴったりな、知る人ぞ知る観光アトラクションの一つに、鵜飼がある。木曽川をはじめ中部地方各地でおこなわれる鵜飼は、本物の日本通にしか知られていない。繰り広げられる光景自体はとても退屈なものだ。伝統装束をまとった鵜匠が、訓練をほどこした鵜を数羽、紐でつないだ小船を操る。弟子が船首でかがり火を打ち振り、それに引き寄せられて水面まで上がってきた鮎を鵜たちが捕まえる。鵜が鮎を食べた瞬間、鵜匠は紐を強く引っぱって首を絞め、鵜が鮎を飲み込めないようにして喉から鮎を引っ張り出す。あなたが土産話にすべきなのは、この鮎の獲り方などではない。こうやって獲った鮎を、別の船をレストランにして食べさせること、そして、鳥が吐き出した魚を80ドル払ってでも食べたい観光客が大勢いるという事実こそ語って聞かせるべきだ。

(訳:ピンキィ君の夫)

はい、はい、日本人はね、暗闇でかがり火さえ焚けばなんでもOKなんです。もう、鳥が吐き出した魚だろうが、くたびれた中年同士の不倫だろうが、もう何でもOK。夜桜とともに日本人の感覚を狂わせる2大アイテムですから。『鵜が吐き出した魚』→『今、目の前にある魚』のあいだにある何ものかを、かがり火が焼ききっちゃうんですよ。そうとしか考えられません。他に考えられる理由は... うーん、歴史? 貴族が楽しんだという歴史? それだけで鵜が吐き出した魚を喜んで食べることが出来る?

日本人の名誉の為に言っときますと、日本人はどんな動物が飲み込みかかったものでもOKなのではありません。あくまでも鵜だけです。だから『鵜飼の鮎は高価とお嘆きの貴方の為に』とかなんとか銘打って、アヒルが飲みかけて吐き出した魚や、ペリカンの下くちばしの袋(正式になんていうんでしょう)にたまった魚を食べさせる商売を始める人はいませんし、いくら可愛いからといって『ハム太郎(しかし、今の日本には一体何匹のハム太郎が...)のほお袋から採りたてのひまわりの種』なんてものも売ってません。

中国にはもっと上をいく高級食材『ツバメの巣(親鳥の唾液で固めてあるらしい)』のスープなんてものがありますし。鵜が飲みかかったものなんて、唾液含有率から言うとツバメの巣の次に高級な食品ということに...なりませんか?

しかし、この伝統芸能(歌舞伎座の幕の内弁当が高いように、鵜飼の鮎が高いのも伝統芸能鑑賞の一環だからなんでしょう)、うっかり鮎じゃなくてブラックバスなんぞが獲れてしまった時はどうするんでしょう? 鵜を再び川へ突き落として魚を吐き出させて『なかったこと』にするんでしょうか?


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