フィンランド:スターリン
フィンランドで出版されている高校生向けフィンランド現代史の教科書から。
1948年、フィンランドはソ連と友好協力相互援助条約を結んだ。これは1948年4月6日に締結された。写真で署名しているのはソ連のモロトフ外相。その後ろ、フィンランドの外相、カール・エンケルとラインホルト・スヴェント(訳注:当時、フィンランドの外相は二人いたらしい)の隣に立っているのがスターリン。. | |
Quoted from P.154, "Muutosten maailma 4", Esko Heikkonen, Matti Ojakoski and Jaakko Vaisanen, Werner Soderstorom Osakeyhtio, Finland, 2003. |
練習問題: 1. 上の2つの写真には違いがあります。両者を比較しましょう。そして、なぜ二種類の写真ができあがったのか、その理由を考えましょう。 (訳と推測:ピンキィ君の夫) |
『フィンランド史の教科書、せっかく買ってきたけど読めないんだよなぁ』と、つらつらと眺めていたところ上の写真を発見。これは共産国名物(というか独裁恐怖国家名物)『減って減って(時々)増えて』写真、別名アイコラならぬフィアコラ(粛清コラ?)。それもこのテの写真が隆盛を誇ったソ連スターリン時代もの〜(それらを集めた本が出ているくらい)。これはどうしても写真のキャプションを読まねばなるまい、と夫に訳させる(実はフィンランドで『芬英辞典(つまりフィンランド語⇒英語の辞書)』を買ってあるのだ。私は1ページも触ってないが)。
しかし、キャプションは上の通りのそっけなさ。『じゃあ、なんでこの写真並べてあんだよ〜』と改めて本を眺めてみると、ページの片隅に青い四角で囲った文章が。『もしかしてこれは日本の教科書でも良く見る”考えてみましょう”じゃない?』と夫に再び訳させると、大ビンゴ。いきなりディープな設問かましてきます、フィンランド史教科書。
多分、授業では『扉が移動してます!』『机が大きくなってます!』『みんなの向きがちょっと変わってます!』などの週刊ポストの間違い探し並みの答えが返ってきた後、痺れを切らした先生が『もっと大きな視点で考えなさい!』と一喝、『そういえば、軍服の人たちの並び順が変わっています』『いなくなっている人や増えている人がいます』『なんかスターリンが気持ち大きくなって、スターリンライトが当たっているような気がします』などの答えが返ってくるのではないでしょうか?(いや、フィンランドの高校生もっと真面目に授業受けてるかもしれませんが)
え〜、若い方々はご存知ないかもしれませんが、中国やソ連が厚〜い鉄のカーテンに覆われていた頃、西側マスコミはテレビ中継の画像や、通信社から発表された写真の並び順で『次のソ連の書記長はこの人』とか『中国のNo.2はこの人』とか推測していたのだ(今話題のアジア某国は血統重視らしいので、”何番目の息子が継ぐのか”ぐらいしか推測しようがないらしいが)。7時のニュースとかで『ソ連の革命記念パレードにおいて○○氏の姿が壇上になく、情報筋によると○○事件に関連して失脚したものと思われます』なんてニュースが流れていたものです。でも、スターリン時代のこういう写真は、そういう理由よりも、スターリンが『消しちゃった』人を公式記録写真からも『消しちゃった』ものなんですけどね。で、同じようなことをスターリンの敵だったヒトラーも、かつてお友達だった頃の毛沢東もやってました。
同じ教科書に載っていた100年ぐらい前のノキアのポスター。
ご存知のかたも多いと思いますが、クールな携帯で売っているノキア、実は携帯電話の前は靴を作ってたんですね。というか、ノキアのホームページの『ノキアの歴史』コーナーを見ると、1865年に製紙パルプ業から始まって、電線、ゴム製品(靴とかタイヤとか)、電機製品(テレビとか)と、どんどん多角化していって、10年ぐらい前に倒産しかけた時に携帯電話だけに絞って大成功したようです。
まぁ、日本の企業も前身が意外な商売してたりしてるところもあるんですが、ここまで極端なのも珍しいですね。日本企業の場合なんかしら前身と関係ある方向に転進してるしなぁ。
[追記] (2006/10/09)ある日、NHKの『その時 歴史が動いた』を見ていた夫が騒ぎ出す。
中ソ同盟の調印シーン(1950年2月14日)。スターリンはともかく、周恩来の隣に立っている軍人さん(多分)、フィンランドの時と同じ人だぁ。2年間、粛清されずに生き抜いたんですねぇ...
スターリンの左隣の人も、先の写真ではうつむいてるんで今ひとつ確信が持てないんですけどモロトフ外相?
[追記] (2009/05/09)その後、スターリンのフィアコラばかりを収めた写真集を夫が入手。詳しくは こちら へ。