日々是口実 2003年 ロボデックス編
某月某日
パシフィコ横浜にロボデックス2003を見に行く。本当は前日に見に行くつもりだったのだが、暴風雨で断念。今日は春休み最後の日曜日なうえ、昨日お出かけを断念した人々が押しかける(私らもだが)と見て、朝いちに出かける。チケット購入も入場も全然待たずに入場できそうだったのだが、ここでバカ夫が『ニコチンを補給させろ』とぐずりだす。ああっ!! もう!! てめえはエイトマンか(あれは冷却剤だが)!! ニコレット始めろ!! たばこの葉でも噛んでろ!!
なんとかスムーズに入場。入場して最初に観た『世界一小さいロボット』(今でも国立科学博物館で売ってるんだろうか)の、有名な振付師に振り付けしてもらった(意味あんだろうか?)というマスゲーム(マスゲームを踊るのは2番目に小さいロボット)に何か嫌な予感がする。
まず、企業ブースをぐるっと回ってみたら予感が的中。企業のロボットはどれも、洗練された(というかどれもこれもなんとなく似たような)形のものが、車輪で転がって、ちょっと気が利いたことをやって見せる(いや、その『ちょっと気がきいたことをする』のが大変なのはよく判るんですけど...)か、おっさん臭く歩いて見せるものがほとんど。
そのうえ、そりゃあ、きつくて人間がやりたがらないのは確かだが、人間の労働力が余っている建築系ロボットなどもあって、そんなもの投入してどうするのよ、などという思いがよぎる。『危険な放射線領域内の作業、事故現場の復旧に』とかが売り文句だが、人型にする必要が全然ないような気がする(というか『こんなとこに何千万もするロボット入れておしゃかにするより、お前行け! お前! 涙金のほうが安いんだから』なんて言う現場監督がいそうで恐い)。
出渕ロボットなんか、デザインはパトレイバーだが、直立しても膝は曲がったままだし、女声だし、いちいちうるさいし(何か動作をする度に『○○します』と言ってから動く)、肝心な仕上げは人にやらせるしなので、多分現場に投入されたら現場監督に『タラタラやっとらんでさっさと動け〜!!』と殴られまくられること間違いなし。頭とお尻部分の装甲をちゃんと厚めにした上に、ケツバット喰らったときに姿勢を維持できるシステムも組み込んでおかないと、あっという間に壊れるだろうなぁ。
ASIMOは歩く速さが2倍になってました(吉本新喜劇によく出てくる、腰抜かしつつ逃げるおっさんみたいでした)。『どうせなら、速さ3倍にしてから赤く塗って発表すりゃいいのに』という声多し。
やっぱり企業ロボットより大学ロボットの方がおもしろそうだなぁ、ということで大学ブースへ。
おおっ、ロボフェスタ神奈川から2年ちかく、どこもプレゼンテーションが格段に上手くなってるじゃん。すごいすごい! 中でも早稲田のフロントのお嬢さんの滑舌のよさと、バックの司令担当のお嬢さん(夫好みの短髪美人)のキュートさが光ります。ここの表情ロボットの、欲望に忠実な感情表現(これが、すげ〜おっさん臭い。なぜロボットって、おっさんくさいか子供くさいかのどっちかになるんだろう?)も好感度大(目の前のリンゴ欲しさの余り、観客側へ突っ込んでいきそうになっていた)。
で、日本人にしか考えつかない(多分)ロボットがこれ。
相槌ロボット...人間がマイクで喋ると、しゃべくり担当ロボットが喋るアクションをするんですが、こいつら、それに反応してウンウンと頷くんです(頷きに大小がちゃんとある)。でもって、こいつらのシステム名が『さくら』...
未来の香具師さんはヘッドセットつけて、こいつらを抱えて旅に出るんでしょうか。ご飯代や旅費は要らないので安上がり。でも、発電機も持ってかなきゃいけないな。それに『まぁ、安いのねぇ!! ねぇ、ねぇ、これいただくわぁ。2個ちょうだい!! 孫にも買ってやんなきゃ』ぐらいの発声が出来ないと役には立たないとは思いますが...
マグダンの後継機も来てました。開発者のかたは、以前拝見した時よりも、ずっと洗練されたスタイルに。ところで、後ろのほうで微笑んでらっしゃったスーツ姿のビジネスマン然とされたかたはどなたなんでしょうか?京商のかた?
この後継機、ダイエーホークスの昔のヘルメット(『おまえんとこの球場はカラスが出んのか』といわれたあれです)にちょっと似ています。でもって、お愛想もちょっとだけ良くなっています。歩いてお愛想を振りまいて球蹴りに失敗するさまはこれをどうぞ。さすが京都製ロボット。『東蝦夷なんかには、これぐらいで充分どす』と言わんばかりの投げやりな挨拶っぷりが清々しいです。
ところで、夫お気に入りのSAYAちゃんも来ているという事で、夫は『今度こそセクシーSAYAちゃんの動くところを拝ませていただくぞ!!』とはりきっていたのですが...
今年のSAYAは受付嬢らしい。内部機構はどうだか判らないが、見た目はどうみてもグレードダウン。去年の色っぽさのカケラもない。こんな恐い顔してる受付嬢に話し掛ける人がいるのか? というか、怒り顔や不快顔、恐怖顔もあるSAYA、受付嬢には不向きなんでは? まぁ、無駄な飛び込み営業撃退用にはいいかも。
しかし、動作不全に陥ったT-1000じゃあるまいし、話しかけられてないときは顔を初期状態に戻しておいてほしいもんだが... と思ってふと横を見るとSAYAの仲間(全然違う機能のロボットだったが)の顔もなんかヘン。もしかしたら、開発者の方の趣味なのか?
で、今回一番注目を集めていたのが日本文理大学のこれ。
あなた、これ、空飛ぶんですよ、空。それにしては外装が貧弱なのが気になりますが、なんせ空飛んで人命を救うらしいんですから、そんな細かいことは気にしないってことで。
それにこの舞台装置。檻ですよ檻。凶悪な悪の香りがするじゃありませんか。期待大です。実演時間が近づくと、大勢の子供たちも『これ、飛ぶんだって』とわくわくしながら集まってきました。でも、ちょっと気がかりなのがこの張り紙。
で、外装を取った(というか、実演直前に外装を被せる前の)状態はこんな感じ。へなへなの外装に比べてナイスな構造。
しかし、気になるのは、ロボットの側にしゃがみこんで、しきりとケータイで時刻を確認しながらメーター(多分圧力計)を指先でコンコンと叩いている教授。あのぉ、叩いて直るものなんでしょうか?
そして、舞台裏には電気ポット(お湯を沸かしている模様)が3台とバケツ、そして柄杓がわり(多分)の鍋。いや、日本のハイテク技術は100円ショップに支えられている(100円ショップがあまり普及していない頃、国立大学のとある実験室では予算不足でビーカーが買えないため、ワンカップ大関の空きカップが大活躍していたというのは有名な話)とは知っていましたが、ここまでお茶の間テイストに溢れた中で開発された『空飛ぶロボット』に一抹の不安が...
檻の前で待つこと15分。取りあえず『空飛ぶロボット』は発進しました。飛ぶ姿はこれ。
ジャイロを内蔵していて、ちゃんと着地するはずがコケた(この回はたまたま失敗しただけかと思って、わざわざ一時間後にもう一回観たが、やはりコケていた。もう一回飛ぶ姿はこれ)。
檻を取り囲む子供達は、まだ何かがあるはずだと信じて待っていましたが、教授の『はい、これでおしまいです』の一言に大ブーイング。でも、大人には大受けしていました。なるほど、説明板に書いてあった『エンターテイメント』とは、この一発芸のことだったようです。見世物だから檻に入ってるのかぁ。でも、これロボットじゃなくて、ただのロケットだよなぁ。
ちなみに、後でパンフレットを読んだところ、この教授、某重工メーカーでH-2ロケットなどのエンジン開発に関わっていたかただそうです。なんとなく納得できる『霧隠才蔵』の打ち上げ風景でした。
この『ロボデックス2003』の会場内でひときわ異彩を放っていたのが、隅の軽食コーナーのケンタッキーの隣にあったこれ。
なぜ、青汁。いやもう、桜木町駅や横浜駅でも、これを持った人があちこちうろうろしてました。それだけで『ああ、あの人もロボデックス帰りなのねぇ』と判ります。
外人さん(父母息子のファミリー)も貰ってましたが、そのお母さんはフライドチキンを齧りながら、すごく不思議そうな顔でパッケージを凝視してました。家に帰って開けてびっくりしたろうなぁ。だってロボットに全然関係ないんだもの。
うちは2箱貰っちゃいました。で、開けてみたところ、パッケージにはこんなおそろしい注意書きが。
心臓のほうは『まずさのあまり心臓が止まっちゃうかもよ』という意味かもなぁ、とも思ったのですが、腎臓や甲状腺までとなると、これはただの『まずい野菜ジュース』じゃないようです。私は一応どちらも問題ないので飲んでみたのですが、これに関して言えば、ブロッコリーをそのままジュースにしたような感じでした。飲めなくはないけど美味しくもないです。マヨネーズとかまぜたらいいかもしれないけど、それじゃ健康になれないだろうしなぁ。
で、この日は『アトム誕生前夜祭』だったんだそうで、なんかやけに派手なイベントもやってました(手塚息子、芝居ッ気出しすぎ。天馬博士気取るなら髪黒くして、髭生やしてこいや〜)。
まぁ、『アトムみたいなロボットをつくる』というと開発コンセプトが(会社の上層部やらスポンサー様やらにとって)判り易いというのはわかりますが、今、ロボット作っている人って、本当に小さい頃『アトムつくりてぇ』と思ってたんでしょうか?
いや、私の小さい頃は、アトムって『お腹が開いて機械が詰まっている、やけにヨイ子の男の子。ときどきエネルギーは入れてあげなきゃいけないみたいだけど』っていうイメージしかないもんで。
やっぱりロボットといえばジャイアントロボか鉄人(人間よりずっと大きくなくちゃね)、それか万博で見たフジパンロボット館のロボットとか、お祭り広場のロボット。そうじゃなければサイボーグ(009とかエイトマンとか)だったんですよ。
長じて、高校生の頃おこづかいはたいて買ったアシモフの『わたしはロボット』を読んで『ロボットつくりてェ』と思ったものの、物理の点数が追いつかなかったもんであきらめちゃったんですが、そのときなぜロボットを作りたかったというと、『スーザン・カルヴィンみたいになりてぇ』と思ったからなんですね(で、スーザン・カルヴィンは、どっちかというと駆動系開発者じゃなくて電子頭脳開発者なもんで、私もソフトのほうからアプローチしようと思ったんですが、やっぱり脳味噌が足りなくて、ごく普通の事務系プログラマーになっちゃいましたが)。
それに、みんな『アトムをつくりたい』とかいってるくせに、出てくるロボットのデザインに少しもアトムテイストが入ってないのが不思議。本当にアトム作りたくて大人になったんなら無駄な装飾でもいいから、頭尖らすとか、赤いブーツ履かせるとか、黒いブルマー履かせるとか、一歩踏み出す度にピョコピョコと音出すとかしてみろよ、おい、リスペクトのかけらでも見せてみろよ。
前夜祭も、生まれたての子馬みたいにヨロヨロでもいいから、あのアトム人形を歩かせろよ、耳から湯気ださせてみろよ。こんだけアトムアトム言ってるんだから、心ある企業のどこか一社でもいいから、自分とこのロボットにアトムのガワ着せて歩かせてみろよ(アンビリカブルケーブルつけててもいいから)。
とか思っちゃいました。子供たちも『アトム、アトム』って言ってたけど、なんか親に操られてないか? お前達ちゃんと予習してきたか? う〜ん、それにちゃんとアトムをテレビで見て、アトム見たくて来た子供たちには、起き上がりアトムなんかより、たとえ着ぐるみアトムでもいいから会場を歩かせといたほうがよっぽど嬉しかったんじゃないかなぁ。